東京地方裁判所 昭和41年(ワ)1150号 判決 1967年2月23日
原告 高谷菊一
右訴訟代理人弁護士 工藤勇治
被告 花田千代治
右訴訟代理人弁護士 山崎武三郎
主文
被告は、原告に対し、九〇万円とこれに対する昭和三九年九月一一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮りに執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決と仮執行の宣言を求め、請求の原因として、原告は、昭和三九年五月二〇日被告に大二証書株式会社株式二四、七〇〇株を代金一、七七五万円で売渡したところ、被告は、これが代金の最終支払日たる同年九月一〇日までに内金一、六八五万円を支払ったにすぎぬから、被告に対し、残代金九〇万円とこれに対する右支払日の翌日である同年九月一一日から完済まで法定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めると述べ(た。)立証≪省略≫
被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因事実はすべて認めると答弁し(た。)≪証拠関係省略≫
理由
一、請求原因事実はすべて当事者間に争いがない。
被告の抗弁の提出について附言する。被告訴訟代理人は、本件口頭弁論が終結した第九回口頭弁論期日(昭和四二年一月二四日午后三時)において、次回に抗弁を提出する旨陳述している。しかし、被告訴訟代理人は、答弁書において、本案につき抗弁のあることを前提として本件の移送の申立(本案につき答弁等をしない。)をしたところ、右申立は第六回口頭弁論期日(同四一年九月一九日午前一一時)に却下されたにも拘らず、その后前記第九回期日に至るまで、抗弁の陳述は勿論これを記載した準備書面も提出しない。以上は本件記録上明らかである。次に、第四回口頭弁論期日(同四一年七月一一日午前一〇時)において、当裁判所が、前記移送の申立の判断資料を得べく、被告訴訟代理人に対し、右申立の理由に掲げる申請予定の証人の氏名等を明らかにするよう求めたところ、これにつきその后何らの応答がなかったことは当裁判所に顕著な事実である。
以上の事実からすると、仮りに本件につき第一〇回口頭弁論期日を指定し、その際被告訴訟代理人から抗弁が陳述されたとしても、これは故意に因り時機に後れて提出されたものというべきであり、かつ、答弁書によると、抗弁につき帳簿類、また多数の証人の取調が予想されるから、これが取調のため訴訟の完結が遅延されるといわざるをえず、結局、右抗弁の提出は民事訴訟法一三九条一項により却下されるべきものと考える。
二、請求原因事実によると、原告の本訴請求は理由があるから認容し、同法八九条、一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 宮崎啓一)